チャンバー(セラミックス収納容器)は金属製で丈夫なものですが、稀に変形などの異常が発生する事が有ります。これからご紹介・ご説明する事例は当社の長い歴史と実績の中でもたったの1回しかなかった特殊な事例ですが、このような事もあり得るという事例をご紹介します。
まずはチャンバーの素材について解説します。
通常はチャンバーをSUS(ステンレス)で作成します。「鉄製では駄目なのか?」鉄でも構いませんがステンレスを採用する理由をご説明します。
・錆防止。
ステンレスはその名の通り「錆び(stain)が無い(less)」錆びにくい材質です。強度の低下や変
形、破損、内部のセラミックスのこぼれや破損を防止できます。錆び対策は脱臭装置を屋外に設
置する時には必須の事柄です。
・長寿命。
セラミックスと同様に超寿命! 超寿命のセラミックスには超寿命のステンレスを合わせる事
で安定して脱臭装置の長期使用が可能となる。
その他の素材。
・ガルバリウム。
屋内設置で雨に濡れる事が無ければ、排気中の過剰湿気が無ければ、その様な時ならばガルバ
リウムなどで制作する事もあります。
・鉄。
設備が大きくなるとステンレス製では費用が高騰するので、鉄で作成する事もあります。
そのような時には内外に防錆塗料などを塗布して錆び対策とします。排気が高温等の特殊な条
件下では塗料が溶ける、剥がれ落ちる事もあるので注意が必要です。
以下に数少ないチャンバー変形の原因を記載します。
通常の使用では変形する事など無いのに何が原因で変形するのか?
・顧客による設備改造! による圧力の増加。
稼働条件の変更(風量増加)。顧客によるブロワー(送風機)の改造で静圧と風量が増加。
稼働条件を変更する時には事前にご相談くだされば内容に沿って対策を助言いたします。自己
流の改造などは異常発生の原因なのでお勧めできません。
・素材が薄い。
安く上げるため?に客先で薄いステンレス板で作成した。客先の出入り業者に製作を任せる事
はよくある事です。しかし板が薄くなれば当然強度が低下します。
この2つの要素(負荷増大+強度低下)が重なり、風船が膨らむ様に、餅が焼けて膨らむ様に、チャンバーが膨張・変形しました。
チャンバーが変形するとどうなるのか?どんな不都合があるのか? 実例を図で説明します。
まずはUFOシリーズの充填空間の変形の例です。
下図は制作当時=異常発生前の充填空間断面図です。四角形で四辺は真っ直ぐ、内部には大きな隙間が出来ない様にセラミックス(UFOシリーズ)をまんべんなく充填しています。排気は入口から奥に流れる途中でセラミックスに接触・吸収されてセラミックスの触媒効果により分解・脱臭されます。
UFOシリーズ充填空間断面図・正常時。
一度充填してしまえば通常ならば何も問題ないのですが、設備設置後に行われた「ブロワーの改造による静圧の上昇と風量の増加」にチャンバーが耐え切れずに変形・膨張しました。
UFOシリーズ充填空間断面図、変形後。
上図の黄色部分が膨張した空間です。このように膨張して内部空間が拡大されると内部に空洞が出来てしまいます。
セラミックスが膨張部分に移動してチャンバーの上部に大きな隙間が出来てしまいます。排気の大半は抵抗の高いセラミックス部分を通過することなく抵抗のない隙間から素通りします。少しの隙間くらい大した事はないだろう?とは考えないで下さい、すぐに対処修復する必要があります。
正常時と異常時を比べてみましょう。
左:正常時 右:異常時
右の異常時ではチャンバー上部に隙間が出来ています。隙間が出来ると、「排気が隙間を通る=セラミックスに接触しない=吸収されない=分解されない=脱臭されない!」という事になります。脱臭能力の低下を招く異常事態なので対処が必要です。
対処方法。
・ブロワーを元に戻す。
ブロワーの改造による圧力の増加、風量の増加、これらが変形の原因なのでブロワー(圧力&
風量)を当初の設備に戻します。
・チャンバーの変形を修理・修正する。
チャンバーの異常も復旧する必要が有ります。作り直しで交換すると費用が掛かる、そもそも修
理や交換が不可能! そのような時には別の方法を考えます。
・隙間にセラミックスを充填する。
チャンバーの修理・交換が出来ない時はセラミックスを追加充填して隙間を塞ぎ、排気の漏れ
をなくします。
UFOシリーズの充填空間では追加充填でも対策が出来ますが、セラ・マジック(セラ・ブロック)ではどうなるでしょうか? セラマジックを例に挙げてご説明します。
セラ・マジック充填空間断面図、正常時。
UFOシリーズとは違い隙間だらけではないか?とお考えかもしれませんが、側面から見ると下図のようになります。
セラ・ブロック充填空間、側面図
この様にセラ・マジックを1段通過する毎に次の段のセラ・マジックに接触する仕組みとなっていますので、排気が素通りする事はありません。
隙間は空気抵抗の低下と脱臭能力を両立させる為の工夫であり、実際には十分な脱臭能力を確保できます。
しかし、チャンバーが変形してしまうとどうなるでしょうか?
セラ・マジック縦断空間断面図、変形後。
UFOシリーズと同様に左右と上部が膨張(黄色部分)して隙間が生じます。
内壁沿いの隙間から排気が素通りして脱臭能力の低下に繋がります。空気は抵抗の低い方へと流れる性質が有りますので隙間が小さくても予想以上に多くの空気が隙間を通過して漏出します。
UFOシリーズの様に追加充填出来ない(隙間が小さいのでセラ・マジックが入らない)ので、チャンバーの変形を直す・チャンバーを交換する、等の措置で対策する必要があります。
チャンバーの異常時(変形時)の対応をまとめます。
・異常発生!
↓
・異常の内容を確認する。
↓
・異常の原因を調査し特定する。
↓
・対策を考慮し決定する。
↓
・対策を実施して正常な状態に復帰する。
この様に調査・対策する事で「正常な状態に復帰=脱臭能力を回復」します。
具体例を挙げますと、
・異常発生:脱臭能力が低下!予定通りの脱臭能力が発揮できていない!
→ この様な「異常発生!」という連絡がありましたら現地へ出向いて調査をします。
・原因の調査と特定:設備機器全般を点検し、異常の有無を確認します。異常の内容と異常発生
の原因を突き止めます。
→ 顧客によるブロワーの無断改造(契約違反!)により圧力が増加&風量が増加した。チャ
ンバーの素材が薄くて強度が低かった。これらの結果としてチャンバーが変形・膨張して隙
間が出来る。その結果として排気がセラミックスに接触せずに隙間から素通りした事により
脱臭能力が低下した。
・対策を決定:以上の原因を取り除くために採るべき対策を決定します。
→ ブロワーの改造を元に戻す、初期の設計値に合わせる。そうすれば圧力と風量も元通り。
→ セラ・マジック用のチャンバーの変形は修理して元に戻す。
UFOシリーズ用のチャンバーは膨張して出来た隙間にセラミックスを追加充填する。
・対策を実施して正常な状態に復帰:対策を決定したら速やかに実行します。
→ 異常の原因を解消して正常な状態に復帰!
→ 脱臭能力の回復!
最後になりましたが、異常時の対策費用は誰が負担する?
異常発生の原因の所在によります。原因を発生せしめた人物・組織の責任として費用を負担して頂く事となります。上記の例の場合にはブロワーを無断で改築した客先の責任とみなして費用の負担を要求する事となります。
今回取り上げた事例については「奇妙な事例のご紹介」の、「事例4、俺の勝手はお前の責任?」で解説していますのでよろしければそちらもご覧下さい。