設備導入当初の必要経費を初期費用=イニシャルコストと称します。第1日目の導入費用を初期費用と見なして2日目以降のコストはランニングコストと見なす会社もあるようですが、今回はセラミックスの超寿命に合わせて年単位で考慮し、「設備導入の第1年目に必要となる経費」を”初期費用として計算します。
比較対象となる活性炭の設備概要は、客先担当者の説明を引用すると「活性炭の業者が提出してきた見積では、25mプール1杯分の収納容器を作り、半年に1回=1年に2回交換する、1回当たりの交換費用が2,000万円、=1年に2回交換で4,000万円」だそうです。
導入初期には、
・脱臭製品:脱臭装置の中に充填する活性炭やセラミックスなど。
・脱臭設備:脱臭剤を収納する容器(脱臭装置本体)や、送風機・ダクト・等々の付帯設備。
・消耗品 :1年間の設備稼働に伴い消費するもの(脱臭製品以外)。
電気・水道・等々、更に設備点検(修理は含まず)費用(1年分)」も合算して初期費
用=イニシャルコストを計算します。
・セラミックス脱臭方式:脱臭製品=セラミックス + 脱臭設備 + 消耗品
5,000万円 + 2,000万円 + 100万円
セラミックス導入1年目の費用 = 合計7,100万円
・活性炭脱臭方式:脱臭製品=活性炭 + 脱臭設備 + 消耗品。
4,000万円 + 2,000万円 + 100万円
活性炭導入1年目の費用=合計6,100万円
注1:活性炭の収納容器については不明なので推定しました。
注2:工事費やその他雑費等、一通りの経費は収納容器&付帯設備に含むものとします。
注3:処理風量が同じならばブロワーの性能や電気代にも差はないものと仮定します。
客先ご担当者様の言によると活性炭脱臭設備は「25mプール1杯分の収納容器を作り、1回交換すると2,000万円」と言う事でした。ここから推定すると、
・プールの容積:縦25×横13×深さ1m=325m3
・活性炭の比重:0.3(ちなみに水が1です、容積が1Lで1kgだと比重が1です)
・活性炭の交換量:体積325m3×比重0.3=97.5トン≒100トン(1回の交換量)
・交換費用:2,000万円(100トン)/回 → 20万円/トン
・活性炭単価:20万円/トン、200円/kg
・交換頻度:2回/年
・1年当たり交換費用:2,000万円/回×2回・年=4,000万円/年となります
客先のご担当者の言を基本として設備規模から交換量・交換額を計算しましたが、2006年当時の活性炭価格と比べても大きな変動は無く概ね妥当と言える金額となりました。
活性炭を収納するには「25mプールに相当する大きさの設備」が必要だそうですが、そんな大きな設備がたったの2,000万円で作れる? と言う疑問があるでしょう。この金額は当社の推定であり、もっと高くてもおかしくありませんし、実際にもっと高くなるのでしょう。
*通常ではセラミックスよりも活性炭の方が ”初期費用(だけ)は安くなる” 事が多いので、そうなるように意図的に活性炭収納設備の費用を安く設定しました。
脱臭用活性炭のビジネスモデルは「脱臭装置導入後の(頻繁な)活性炭交換で利益を確保する」というものと考えられます。「脱臭設備本体はたとえ赤字でも初期費用を安くする事で仕事を受注し、その後の交換で赤字を回収して更に利益を確保する!」と考えて実行する事も十分考えられます。
客側の視点で見ると「頻繁な活性炭交換=維持費用の増大」となり、長所が転じて短所となりますので歓迎できませんが・・・。
稀に公共事業を1円で落札する業者がいますが、どう考えても赤字です! どうして赤字を垂れ流すような事をするのでしょう?、その内容を見ると、”1円は初期費用の価格”であり導入後の維持経費=ランニングコストは別途となるのでそちらで元が取れるようです。脱臭設備も同様で、一度導入すれば簡単には設備を交換できない! のでその後長期間にわたり高額の維持経費・交換費用を支払い続ける羽目になります。なので、受注の為に設備を安く見積もっても、赤字覚悟でも、長い目で見れば回収できて利益が出るのでおかしな事ではありません。
ならば「活性炭を値下げすればよいのではないか?」とも考えられますが、 そんなことをしたら「導入後の活性炭交換費用も値下げする事になる=売り上げと利益を大幅に削る事になる」のでそれはしないでしょう。
要するに「受注の為には安値を提示する必要がある 活性炭ではなく脱臭設備本体を値引きして見積価格を下げよう! 初期費用は赤字でも維持経費で何倍・何十倍にもして取り返せる!」と考える、そして実行する、という可能性が少なからずあると考えられます。
数字について、「推定? 概算? そんな不正確な計算は意味がないのでは?」とお考えかもしれませんが、「活性炭は初期費用”は"セラミックスよりも安くなる事が多い」という”現実がありますので、現実に合わせる形で金額を推定しています。
また、「活性炭の収納設備を安く見積もる事は活性炭に有利=セラミックスに不利!」になるので、決して「自社に都合の良いデータを作り上げているわけではない(むしろ都合が悪い!)」と言う事もご理解いただけるでしょう。
最初の1年の段階で初期費用=イニシャルコストを比較すると、セラミックスが7,100万円、活性炭は6,100万円となり、「イニシャルコストは」活性炭脱臭方式の方が安くなります。
「節約効果が無いじゃないか! かえって高くつく!」とお考えになるかもしれませんが、これは”最初の1年の比較”です。1年間限定で脱臭装置を使用する、例えば、「設備を1年後には使用停止する」、「1年後には脱臭装置を撤去する」、、「工場を1年後に閉鎖する」、と言うような理由があるならば ”1年間限定”ならば活性炭脱臭方式の方が安上がりになります。
しかし、工場を建設して1年で閉鎖するような事があるでしょうか? 実際には工場や設備機器は10年単位で使用する事が通常で、何事も無ければ半世紀くらいは稼働を継続する事もあります。
おそらく99%以上の確率で1年過ぎても「工場の稼働=脱臭装置の使用を継続」する事でしょう。そうなると使用期間に応じたランニングコストを加算して考える必要が有りますがその費用はどうするのでしょうか? 2年目以降はタダで交換してくれる? 業者がランニングコストを全部負担してくれる? そんな虫のいい話はまずありません。
1年以内に工場を閉鎖するという1%以下の可能性に賭けて(=99%以上負けると解っていて)活性炭を導入しますか? それは「分の悪い賭け=ハイリスクローリターン」であり、そのような”投機≒ギャンブル!”に手を出す事は賢明ではない事をご理解して頂けるでしょう。
逆に考えると、99%以上の確率で2年目以降も使用を続ける事になります
2年目以降のランニングコストを加算する、中期~長期使用を前提としてトータルコストを計算してその結果で判断する事が賢明と言えます。そうすると計算結果はどうなるでしょうか? 比較の結果にどのような影響を及ぼすでしょうか? 中期~長期の使用でセラミックスの超寿命性能がその真価を発揮します。
設備稼働に伴い毎年加算される「維持費用=ランニングコスト」を次の項目で計算します。