最後の手段?として事業場を移転するという選択肢もあります。
都会よりも規制の緩い、あるいは規制の無い田舎に事業場を移転する。さらに遠くへ、規制の無い外国に移転する! と言う選択肢もあります。
「規制に対応できなければ規制の無い所へ移転すればいいじゃないか!」一見すると賢い?ようにも思えますが実際は・・・。
国内の移転ならば従業員は転勤も出来るでしょう、設備も移動できるでしょう。しかし海外移転の場合はどうしましょう? そもそもどこに移転する? 企業の海外移転は昨今では珍しくもない? ですが様々な問題が考慮されます。
1.人材・労働力。
海外移転だと人材は現地採用? 日本の社員は全員クビ? そうなれば労働組合も黙っていないで
しょう、新規採用した社員を1から教育する手間や時間もかかりますし、熟練した職人がいなけれ
ば製品の品質の低下も懸念されます。
2. 資材・機器の調達。
日本国内ならば問題は無いでしょうけれど、日本から海外へ輸出しても輸入規制で出来ない、
出来ても関税が高い、という事もあります。ならば現地生産・現地購入する? 出来る?
3. 製品の輸出。
また製造した製品は主な市場である先進国に輸出する事になるでしょう。それにも輸出国及び輸
入国の規制や関税が関係します。政治的な規制(禁輸等)、経済的な規制(関税・輸入量規制・
等々)があるでしょう。
その他の問題もあります、公害規制・環境規制もその1つです。
4. 環境規制。
”今現在は”環境規制が無い、有っても緩い、そのような理由で移転先を選ぶ事もあるでしょう。
しかし、日本の例でも明らかなように、国が豊かになると国民の生活水準も上がり、環境・公害
についても国民の要望や規制が厳しくなります。その時はまた移転しますか?
5. 治安と政情。
戦争・紛争・テロ・暴動・等々・・・、あるいはデモ、スト、、等々・・・、特に発展途上国で
は治安や政情が不安定な所が多いようです。
6. 社会インフラ。
電気、道路、水道、電話、インターネット、等々の社会インフラがお粗末だと日常の業務や事業
場の操業に悪影響を及ぼします。半導体工場は1/100秒でも電圧が変化すると不良品が発生するそ
うですが、インフラがあてにならないと自社で発電設備等を用意して運営する事になり余計な経費
が増える事となります。治水が不十分だと洪水が起こり事業場は水浸し、高価な機械も全部入れ替
え、と言う事態もあります。
まだまだ不安要因はあります。現地資本との提携の強要で会社を乗っ取られる、会社や工場の国有化、利益の持ち出しの制限、等々・・・、法による統治の不十分な所では権力者の胸先三寸で物事はどうにでも変化します。
移転するにも当然ですが費用が掛かります。その費用はどうやって賄いましょう?
国内の事業場の土地を売りその金で移転する、全費用を賄っても余りが出た、と言う事例もありますが大都市近郊の工場だから土地が高く売れたのでしょう。いつもそう上手く行くとは限りません。
日本でもかつては公害を規制する法律た規制基準は有りませんでした。規制が無ければ事業者はやりたい放題?公害出し放題? 住民・国民は何をされても泣き寝入り? だったのでしょうか?
日本4大公害病と言われる大事件やそれ以外にも多くの公害が発生しています。話し合いに応じないので地域住民から訴えられて裁判になり、その結果多額の賠償を命じられて今でも払い続けている会社もあります。
どこへ移転してもやがて環境規制が制定される事は明白です。公害防止は世界的な傾向でありこの傾向はますます加速するでしょう。今話題のSDGsの目標を達成する為には公害の外の除去・予防で環境を維持しなければなりません。
環境規制と強化は世界的な傾向であり規制の無い所・緩い所は年々少なくなっています。規制は今後も制定・強化されて規制外の無い国・地域は年々減少・縮小していますので、その内に逃げ場は無くなるでしょう。事業場の立地が規制対象となる度に事業場の移転を続けますか?
結局、”移転とは逃げ”であり”問題の先送り→未来にツケを回す”という事に外なりません。