セラミックス触媒で脱臭可能な悪臭成分の例を掲示します。記載した成分は一例であり、この他にも様々な臭気成分に対応・脱臭が可能です。
悪臭を排出すれば「近隣住民の苦情」を招き「役所の改善勧告・改善命令」も行われます。そうなればほとんどの事業者が何らかの対応を実施します。しかし、十分な対策を実施しない、命令を無視して悪臭を排出し続ける、そのような事業者も稀に存在します。
臭気対策を怠り悪臭を排出し続けたらどのような事態を招くのかをご説明します。
事業計画の段階で臭気対策をも考慮し、事業場の操業開始と同時に臭気対策を実施する事が望ましいのですが、それが出来ない事も多々あります。臭気排出が引き起こす問題について初期、中期、後期、の3段階に分けて解説します。
臭気を排出する事業場は数多く存在し、何も臭気対策をしていない例も少なからず有ります。
悪臭を排出し続けていると近隣住民からの苦情が来るでしょう。飲食店では近所に割引券やサービス券などを配る事で臭気対策?とする事例もあります。最初はそれで苦情もおさまるのですが、しばらくするとこれらのサービスよりも臭気対策を求められるので本格的な臭気対策を実施するまでの ”一時しのぎ” にしかなりません。 苦情が発生したらすぐにでも対策・改善を実行すべきですが、それでも対策をしない事業者も少なからず存在します。曰く「規制地域外だから対策は不要!」、「文句を言うのはお前だけだ、お前がおかしい!」、「うちは昔からここにいたんだ、あとから引っ越してきた新入りのくせに先輩に文句をいうな!」、「文句があるならお前が引っ越せ!」、「営業妨害で訴えるぞ!」、「俺たちが日本を作ってるんだ!」、等々・・・。
苦情を言って抗議しても改善されなければ近隣住民はどうするでしょう? 泣き寝入り?
直接抗議しても悪臭の排出が改善されなければ、住民は役所に相談する事になるでしょう。
役所では住民の相談を受けると事実関係を調査します。悪臭の排出と規制違反を確認したら事業者に対して「改善”勧告”」を行います。大多数の事業者は改善勧告を受けた時点で悪臭対策・臭気対策を実施するのですが、それでも対策をしないという事業者も稀に存在します。
改善勧告をしても改善しなければ、役所は先の改善勧告よりも厳しい「改善”命令”」を行います。前段階の改善勧告とは異なり違反すれば罰則が適用されます。実際に約99%の事業者は改善命令を受けた後に何らかの改善措置を実行しています。もしも、今このページを読んでいる貴社が残りの1%に該当するならば早急な臭気対策の実施を強く推奨致します。
臭気・排気・悪臭に関する法律と罰則を下記の表にまとめました。 基本的には「行為者」に罰則が適用されますが、「使用者=命令・監督する立場にある者(法人又は個人)」にも適用されます。
表、悪臭関連法規と罰則規定(抜粋)。
法律 | 項目 | 内容 | 罰則 |
---|---|---|---|
A 大気汚染防止法 | 33条 | 改善命令に従わない | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
34条 | 届け出義務違反 | 3か月以下の懲役又は30万円以下の罰金 | |
35条 | 〃 | 20万円以下の罰金 | |
37条 | 〃 | 10万円以下の過料 | |
B 悪臭防止法 | 24条 | 改善命令に従わない | 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
27条 | 事故発生時に復旧しない | 6か月の懲役又は50万円以下の罰金 | |
28条 | 不報告又は虚偽の報告 立ち入り検査の拒否又は妨害 | 30万円以下の罰金 | |
30条 | 24,27,28条違反 | 事業者(法人又は個人)への罰金 違反する各条に規定の罰金 | |
B 労働安全衛生法 | 119条 | 該当条文多し、詳細は省略 | 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
120条 | 〃 | 50万円以下の罰金 | |
122条 | 119,120条違反 | 事業者(法人又は個人)への罰金 違反する各条に規定の罰金。 |
*上記の内容は法律に関する正確性を保証するものではありません。 *詳細な内容を確認したい方は法律の専門家や関係省庁などに問い合わせて確認して下さい。
これまでの内容をご覧になり「罰金は最高でも100万円、その程度の金は我が社にとって大した金額ではない。」、「罰金を払えばその後はおとがめなし? 実質的に100万円払えば悪臭出し放題ということか? 高い費用をかけて臭気対策するよりも罰金を払った方がはるかに安上がりではないか?」、「懲役? 何年? たったの1年以下! 前科が無ければ執行猶予が付いて刑務所に行かなくても良くなるだろう?」、とお考えの方もいるかもしれません。
あえて言わせていただきます。「考えが甘い!」と。
これまで述べた罰則については「行政罰」であり、民事・刑事裁判とは別問題です。
上記の表にある罰金や罰則で全てが終わるわけではありません。それなのにもう終わった問題として悪臭の被害者との話し合いや賠償に応じなければ? 被害者が「民事裁判」を起こすこともあります。又、刑法に違反すれば警察が動き逮捕や起訴という「刑事裁判」もあり得ます。
臭気・悪臭問題でも他の様々な問題と同様に「民事裁判」や「刑事裁判」のリスクが存在します。他人の生命・健康・財産等を侵害すれば、法令や条例に違反すれば、相応の代価を支払わなければなりません。民事裁判では、損害賠償・銀行口座や資産の差し押さえ・事業場の操業停止、等々・・・、刑事裁判では逮捕・投獄? が想定されます。
できる事ならば、当初から脱臭対策を含めた堅実な事業計画を立てる事をお勧めします。臭気問題を放置することはツケを貯めるのと同じで、後になって高いツケを支払う事になるでしょうから・・・。
この様に悪臭問題は後になる程に、問題を先送りするほどに、事態が悪化して大事に至ります。表向きは事業が順調に進行しているように見えても、臭気対策・悪臭対策を怠る事はいつ爆発するかわからない時限爆弾を抱えるようなものと言えましょう。
既述のように悪臭は典型7公害の1つです。ただ「臭い!」というだけでは済まずに様々な害を周囲に及ぼします。悪臭の及ぼす害についてについて具体的に説明いたします。
事業場の外に悪臭を排出するとどのような害が発生するか?について述べます。この場合に最も被害を受けるのは事業場近隣の住民です。
悪臭を排出する事業者や労働者は排出箇所の間近で強烈な臭気を長時間浴びているので嗅覚が鈍麻する事があります。又、臭気発生場所に比べれば敷地外の近隣では比較的臭気が弱くなるので問題ないと考えがちです。しかし、以前には何もなかった地域で悪臭が発生すれば当然不快に感じますし、悪臭が強ければ、長期間継続すれば、悪臭への不満が募ります。人間の忍耐力や寛容の精神は無限ではありませんので限界を超えれば悪臭に対する苦情を申し立てるでしょう。苦情に対して「悪臭? たいしたことはないだろう?少々臭う程度だろう? 少しぐらい我慢できないの? 私は毎日もっと強い悪臭を嗅いでいるんだ!それに比べれば大したことはない! 大げさに騒ぎ過ぎ!」と考える人もいます。
悪臭の苦情はクレーマーのいいがかりでしょうか? その可能性もあり得ない事ではありませんが、悪臭は確かに近隣住民の生活に悪影響を及ぼします。想定される被害について説明します。
・人間の生命及び健康の被害。
悪臭が人間の生命に危険を及ぼす事例は稀ですが、臭気成分の種類や濃度次第では命に関わる事も
あります。生命の危険が無いとしても健康に被害を及ぼす事は十二分に想定されます。例えば「日常
的に悪臭を浴びせられたせいで、頭痛がする、眩暈がする、吐き気がする、咳やくしゃみが出る、気
持ちが悪い、気分が落ち込む」等々・・・。
→ 病院で診察を受ければ治療費、病院までの交通費、仕事を休めば休業補償、更に肉体的・精神的
苦痛に対する慰謝料、等々が発生します。
・財産の被害。
様々な例が想定されます。例えば、 イ)家具の被害。
衣服を外に干せない、家具やカーテン等に臭いが染みついた。
→ 乾燥機の購入、衣服のクリーニング、廃棄して買い替え、等々。 ロ)住宅の修繕。
窓やその他の隙間から悪臭が入りこむ。建物に臭いが染みついてとれない!
→ 気密性向上の為にリフォーム、住宅のクリーニング、空気清浄機の設置、等々。
ハ)住環境の悪化と対策。
悪臭が入るので真夏でも窓を開けられない。もう我慢できないので引っ越す!
→ エアコンの設置・追加、引越料の負担、等々。
ニ)資産価値の減少。
悪臭のせいでベランダや庭に出られないので実質的に使えない、マスコミに報道されてイメージダ
ウン、売りに出しても買い手がつかない、買い手がいても足元を見られて買い叩かれる。
→ 不動産の資産価値減少! 損害賠償!
これらの問題が想定され、被害が発生するかもしれない? というリスクが存在します。
そして、これらの損害は原因である臭気の排出者=事業者が賠償の義務を負います!
農村などの人口が少ない地域ならば被害は小さくて済むでしょうが、住宅地ならば住宅が集まっているので被害が大きくなるでしょう。ましてや都会にはマンションや高層ビルが林立・密集しています、1件や2件ではなく10件、100件、1000件・・・と被害者が増大する事が十分に想定されます。1件当たりでは大した金額ではなくても数が増えれば被害の総額はどれだけのものになるでしょう? 事業や会社の存続が危うくなる事もあり得ます。
外部への悪影響だけではなく内部でも悪影響は発生します。
・労働者の生命及び健康の被害。
事業場内の労働者は臭気の発生現場に近い所で作業するので近隣とは比較にならない高濃度の臭気
を浴びる事となります。臭気が強ければ人体への悪影響もより大きく、より危険なものとなります。
上記の「人間の生命及び健康の被害」よりも更に悪い事態の発生が想定されます。
このような問題を惹起する可能性がありますし、それだけでは終わらない事もあります。
・操業停止!?
裁判になって「事業場の操業停止命令」が出る事もあり得ます。もし事業活動が出来なくなれば死
活問題です。
→ 事業場の移転。
人家が少ない、規制が緩い、規制区域外、そのような地域に移転する選択もあります。規制のな
い地域ならば役所の指導・命令は無い、人が少なければ被害も少なくなる、と考えられます。しか
し、将来的に規制地域に指定される、規制が強化される、宅地開発により民家と人口が増える、と
いう事態も想定されます。そうなれば同じ事の繰り返しです。勿論、移転費用や事業場の稼働が停
止する間の損失は全て自己負担です。
・公共事業等における入札資格の停止。
入札に事業者が参加するのに必要な入札資格を一定期間停止される事も有ります。官公庁向けの販
売比率が高い事業者には大きな痛手となり業績にも悪影響を及ぼすでしょう。
臭気・公害を発生させると、法律による処罰や裁判による賠償の義務だけではなく、その他の不利益な事柄も派生する可能性が有ります。
・社会的制裁。
法律や役所の指導とは別の方法で制裁を受ける事もあり得ます(合法な範囲内で考慮します)。
→ マスコミの報道。
マスコミの報道により、自社の信用の低下、取引量や取引金額の減少・停止、取引先の減少、銀
行の融資の停止・貸付資金の引き上げ、役所からの補助金の停止、等々の不利益を招く恐れもあり
ます。連日事業場にマスコミが押しかけて事業の支障になるという事も想定されます。
→ インターネットやSNSによる発信。
○○クレーマー事件で有名になったように今や個人でもインターネットやSNSを使い日本国内の
みならず全世界に対して自由に情報を発信できる時代です。マスコミが報道しなくても個人による
情報の発信は防ぎようがありません。ネットは情報の拡散が速い上に一度広まった情報を消す事は
不可能に近いのでマスコミの報道よりも厄介な事になるかもしれません。もし事業者がおかしな対
応をすれば某県議会の号泣議員の様にその所業が全世界に知れ渡り抗議が殺到!(いわゆる炎上)
して世間から袋叩きにされる事となるでしょう。
→ 口コミ。
昔ながらの口コミも軽視できません。「悪事は千里を走る」という様に悪い噂は特に広まり易い
ものです。オイルショック当時には「〇〇銀行が危ない」という根拠のない噂話が原因で倒産する
前に預金を引き出そうとする人が殺到してパニックになった事例があります。
→ 不買運動や取引先への抗議。
抗議や批判の意思を示すためにその会社の製品を買わない、サービスを利用しない、周囲にも不
買運動を呼びかける、そのような事もあります。
それだけでなく、加害事業者の取引先に事実関係を説明して、公害・臭気問題を発生するような
反社会的な事業活動への協力(取引)について再考を促す、と言う事もあるでしょう。
→ 株式総会での質問。
被害者が加害企業の株を1株(最低取引単位)を取得して株主となり株主総会に参加して公害問
題についての質問をする、そうすれば多くの株主・利害関係者に問題が知れ渡り経営陣や関係者の
進退に関わる問題になるかもしれません。
あるいは、マスコミも呼んで会社側の対応を報道させる、マスコミが会場から締め出されてもボ
イスレコーダーで音声を録音して報道する、という事も考えられます。
→ 責任の追及。
会社に損失を与えれば責任が問われます。現場の責任者(工場長等)はもちろんの事、被害が大
きくなれば経営陣の交代、あるいは経営陣に損失の補填を求めた株主代表訴訟を起こされる事もあ
るでしょう。
これ等の例の様に、悪臭≒公害は会社と事業の継続に多大な悪影響を及ぼします。
・悪臭問題・臭気問題は公害である!
・公害は悪(犯罪)であり、法律も社会もこれを容認しない!
・公害の排出が発覚すれば法的な処罰や社会的な批判・制裁を受ける!
・公害による被害は排出者が負担・賠償しなければならない!
・経済的には「公害の損害賠償>公害対策」となる。
・最初から公害対策をする事、公害を出さない事、結果的にはこれが最も安上がりで確実な対策!
これらの事実を念頭に置き、必要な措置を講ずる事を強く推奨いたします。
汚染者負担原則(Polluter Pays Principle)という言葉をご存知でしょうか?
1972年にOECD(経済協力開発機構)で採択されたもので、「”原則”として、汚染(=公害)対策費用・除去費用・原状回復費用・被害者への賠償や救済・その他諸々の費用は汚染者(=公害の原因となる汚染物質の排出者)に負担させる。」という内容になります。
pppによる規制の有無で企業の負担の違いと国際競争力に違いが出るのを是正すべく加盟国間でPPPを実施する事となりました。
従来の様な公害企業への補助金の支給や対策費用の税金による負担は、本来ならば”汚染者=悪徳企業・ブラック企業”が支払うべき”ツケ”であり、国家と国民・納税者に転嫁する事は容認できない! という考えもあります。
自分が汚したものは自分で片づける。当たり前の事と言えばそれまでですが、公害が問題になる前はその当たり前の事すら行われていませんでした。
しかし、現在ではこの原則に則り世界各国で、そして日本でも法整備が進みました。特に日本では4大公害病をはじめとする公害対策のみならず被害者への補償や救済の為に、1973年に「公害健康被害補償法」が制定されました。