お客様のご相談内容によっては、当社から具体的な内容をご提案する前に「脱臭実験&測定」が必要になる事もあります。
お客様からご提供頂いた各種データが標準的で単純な条件ならば、ご提供データから脱臭設備の概要(設備設計、セラミックス使用量、御見積、等々・・・)を作成してご提案出来ます。
しかし、条件が複雑になれば机上の計算だけでは対処出来ません! 不明点を推定して、悪く言うと根拠のないあてずっぽうで設備を設計・導入しても充分な性能を確保出来ない可能性が高いので、導入後に増築・改築・修繕・交換を繰り返すのでは非常に効率が悪く、確実な対策にもならず、時間も費用も浪費してしまいます。
”確実な対策の為に”脱臭実験&測定を行い脱臭効果を確認する必要があります。そして、脱臭実験で得た確かなデータを基礎として確実な脱臭設備・脱臭対策をご提案いたします。
お客様からは「プロなら実験や測定なんかしなくても大体わかるだろう? 過去のデータや経験でわからないの? なるべく予算を抑えて対策したいのだが費用をかけてまで実験する必要がある?」と言われることもあります。何故”現場での”脱臭実験が必要なのか?という疑問にお答えします。
臭気物質は数多く存在しています。一説には臭気物質は30~40万種類存在するといわれます。しかも年々新たな化学物質が誕生しています。これら全ての物質について研究室で実験・測定してデータを蓄積する事には無理があります。
ちなみに悪臭防止法の制定当初は「物質濃度規制」でした。当初はたったの10種類、現在では追加されて22種類になりました。しかし、この規制では不十分(数十万種の内のたった22種類!)であるとされて、新たに別の規制・測定方式である「臭気指数規制」が採用され、大都市では物質濃度規制から臭気指数規制に変更されています。(規制の内容・規制区域の指定・規制値の設定は都道府県・市町村により異なります)。
現実には臭気物質が1種類しか存在しない”単独臭気”が対象となる事は少なく、通常は2種類以上の臭気物質が存在する”複合臭気”となります。例えばタバコの煙には2千~3千種類の化学物質が含まれているそうです。調理臭気も素材(油・調味料・香辛料・等々)の臭気物質が存在する上に、調理の段階で加熱などにより化学変化を起こすので臭気物質の種類と組み合わせは益々増加します。
臭気物質が2種類、3種類、4種類・・・、と増えるとその組み合わせは飛躍的に増大するので実質的には無限大!といっても過言では無く、全ての組み合わせを実験するなど不可能!
複合臭気では臭気物質が干渉・反応して想定外の効果をもたらすことがあります。1+1はいくつだ?と聞かれたら誰でも「2!」と答えるでしょう。しかし、臭気では必ずしも1+1=2になりません。
具体的な例を挙げますと、
・マスキング効果:ある臭気を別の臭気で覆い隠す。消臭剤で悪臭を消す事が主な事例です。
・化学反応:浴槽用洗剤などにある「混ぜるな危険!」の組み合わせのような有毒ガスの発生!
このように複数の臭気物質が混合すると臭気の強さは1+1=2にならない、机上の計算では予期出来ないような反応が起こる可能性もあります。
排気中には臭気物質だけではなく、汚染物質(ホコリ、ヤニ、タール)も含まれます。その他の要素としては、排気の温度と湿度も考慮する必要があります。
汚染物質はセラミックスの脱臭性能を低下させますし、湿度や温度もセラミックスの触媒反応≒脱臭反応に影響を及ぼします。これらの要素も研究室の実験で再現する事は不可能と考えます。
実質的に臭気物質の組み合わせが無限大ならば全ての組み合わせを実験する事は不可能! 代表的な臭気物質に限定して実験と測定を行うとしても膨大な時間・労力・予算が必要になります。実験&測定費≒研究開発費は製品の価格に転嫁せざるを得ませんので最終的にはお客様に負担していただくことになります。もしも大規模な臭気脱臭実験と測定を実施すれば製品価格の大幅な高騰は不可避!
これらの理由から事前に研究室で実験&測定してデータを蓄積する方法は、「再現できる条件や件数が限定される」、また「現実と条件が一致する可能性は低い=現実の役に立つという可能性が低い=無駄な実験が多くなる!」と考えざるを得ません。そして実験の件数を増やせば増やすほどに製品価格の高騰に繋がります。
しかし、設備設計・セラミックス使用量計算・御見積等々のご提案の為には実験&測定データが必要である!効率的に、そして費用を抑えて脱臭実験を行うにはどうすればよいか?という命題に対して当社は「臭気発生現場における脱臭実験を行う事が最善!」という答えを導き出しました。
研究室での実験と現実との間に差異が生じる、計算通りの結果が出ない、「研究室では良い結果が出たのに・・・、何故だ!」という事態も起こりえます。現場に実験機を持ち込み問題の排気を取り込んで脱臭実験を行う事が最も確実な方法です。
不明点が多ければセラミックスの種類は標準的な構成で実験を行いますが、事前にチェックシートや測定データ等で臭気成分が確認できればその臭気成分に最適なセラミックスを選択して使用できますので、標準構成よりもより良い結果が期待できます。
臭気の測定方法は数種類あります。例えば、
・ppm濃度測定:悪臭防止法の”22物質濃度規制”に対応。
・臭気指数測定:悪臭防止法の”臭気指数規制”に対応。
・VOC測定 :大気汚染防止法による”VOC(有機溶剤)規制”に対応。
等々・・・。
当社では主にこの3つの測定方法から目的や規制値に合わせた測定方法を選択しています。
当社では臭気の測定を専門機関に依頼しています。自社測定ではなく第3者機関に依頼する事で測定の信頼性を確保しています。測定機関から「測定証明書」が発行されますので信頼性の高いデータとして役所への届け出等にも使用できます。
研究室での実験と測定を行いデータを蓄積して対処し実験の費用を製品価格に転嫁する方法は非現実的、製品価格が高騰する、これらの問題もさることながら、この方法では実験が不要なお客様にも一律に実験費用を負担していただくことになるので不公平ではないか?と考えます。
「実験が必要なお客様に、必要な時、必要な現場で、脱臭実験&測定を行い、必要経費を負担していただく」、この方法が最も公平かつ費用を抑えられる方法であると考えています。
現地での脱臭実験と測定の結果得られた確かなデータを基礎として、必要な脱臭設備の設計・セラミックス量計算・御見積・等々をご提案いたします。
実験を伴わない机上の計算や研究室での小規模な実験の結果で判断すると、導入後に「計算外? 想定外? こんなはずでは…? こんなことはあり得ない!」 という事態が発生する事もあります。その原因が何であれ設備改善の必要と追加費用が発生します。 そうなれば「これは誰の責任だ!どう責任を取るんだ! 」と責任問題に発展する事もありえます。
事前に脱臭実験を行う事でこのような問題を回避出来ます。脱臭実験による確実なデータでリスク回避≒”保険を掛けるようなもの”であるとお考えいただければ納得していただけるでしょう。